(1)市場調査の目的
(2)市場調査の方法
(3)市場情報の分析
(4)市場の細分化
(5)標的市場の設定
市場調査と標的市場の設定
マクロ環境や市場環境あるいは社内環境など広い視野で行う調査・分析によって企業理念を 形成し目標を掲げたならば、次に行うのが消費者のニーズやその動向についての調査であり、 その調査から得られた情報を分析する「市場調査」である。市場調査から得られた情報をもと に、標的とする顧客や顧客層あるいはエリアなどの標的市場を設定し、マーケティング戦術の 4Pのひとつひとつについて具体的方針や内容が決定される。
(1)市場調査の目的
「マーケティングは、市場調査に始まり市場調査に終わる」と言われているように、市場 調査はマーケティングの原点といっても過言ではない。市場調査はどの商品に需要があり (売れ筋商品)、どの商品には需要がないのか(死に筋商品)という「需要の分析」と、販 売効率の良いチャネルやプロモーションあるいは広告・宣伝の効果などを測定する「販売効 率の分析」が中心となる。
(2)市場調査の方法
市場調査を効率よく実施するためには、その調査目的に適応した調査方法を実施すること である。例えば、一般の消費者の購買動向を調査する場合には、あらかじめ問題点と目的を 明確にし、実態調査(本調査)に先立って事前調査やプリテストなどによって調査仮説を立 てておく必要がある。次に、調査対象をどの地域のどのような消費者に対して行えば平均的 購買志向がキャッチできるのかを検討し、予算や時間あるいはサンプル数などを考慮して調 査方法が選択される。調査範囲としては「全数調査」と「標本調査」とに分類されるが、企 業として行う範囲は限られた範囲の中からサンプリングする「標本調査」が中心となる。 サンプリングには顧客の平均像の仮説をもとに作為的に抽出する「有意抽出法」と、まっ たくの無作為に抽出する「無作為抽出法」とがある。
なお、実態調査には次のような方法がある。
① 質問法
面接調査、郵送調査、電話調査、留置調査など② 観察法
被調査者の行動観察記録、動線観察記録、追尾調査など③ 実験法
実際に現場にいくつかの状況を設定しておこなう、観察・比較調査④ パネル調査法
パネラーの購買行動を継続観察し、行動や意識の変化を捉える⑤ 動機調査法
質問や面談による深層面接法、グループのフリートーキングによる集団 面接法。連想ゲーム的あるいは心理テスト的な方法による投影技法、回答項目を点数化 した物差しにプロットするアンケート方式の尺度法など)(3)市場情報の分析
市場調査によって得られた情報を集計する場合、一般的に集計の手法として「クロス集 計」が採用される。クロス集計は、異なる調査項目間の相関関係を見出そうとする集計方法 である。例えば、消費者の年齢や性別、職業、居住形態、所得などと、購入する商品の価格 帯、機能、デザインなどの商品特性との因果関係を知ることができる。さらに、多数の項目 の相関を分析しようとする場合には「多変量解析法」が用いられる。
これらの手法による分析結果は、調査目的や調査仮説を満たすものなのかどうか解釈を加 えて、最終的な報告書としてまとめられる。
(4)市場の細分化
市場調査の報告書をもとに対象とする市場を絞り込み(細分化:セグメント)、狙い撃つ 市場(標的市場:ターゲット・マーケット)を選別して、細分化され選別された顧客クルー プのニーズに適合した商品を提供することで顧客満足度を高めることができる。
市場を細分化する基準として、P・コトラーは次のような説を掲げている。
① 地理的基準
行政区画、人口密度、気候、交通アクセス、地域産業など② 人口統計的基準
性別、年齢、家族構成、職業、所得、居住スタイルなど③ 行動基準
購買頻度、購買量・額、使用頻度、ブランドやメーカーなどのロイヤルティヘの意識度、広告への反応度など④ サイコグラフ基準
ライフスタイル、パーソナリティ、価値観、性格など
地理的基準 (行政区画、人口密度、気候など) |
人口統計的基準 (性別、年齢、職業、所得など) |
行動基準 (購買頻度、ロイヤルティなど) |
サイコグラフ基準 (ライフスタイル、価値観など) |
(5)標的市場の設定
経済成長期には、企業は市場全体を画一的な市場とした「マス・ マーケティング」を展開しても売れた時代であったが、市場が成熟 していくにつれ消費者は自らのライフスタイルやパーソナリティに 合った商品を選択するようになった。さらに、デフレが進行してい る現在は、必要なものにはお金を支払うが不必要なものには一切お 金を使わないという個客(顧客)満足時代だともいえる。したがっ て、このようなきめの細かい戦略をとらないと企業や商品は顧客に 支持されない状況にある。
市場を細分化し、その一つひとつのセグメントに対し顧客ニーズ を満足させるマーケティングを展開するマーケティング戦略を「差 別化マーケティング」といわれているが、細分化された市場一つひ とつに異なる製品を提供するとなると、極端な多品種少量生産もし くは個別生産という極めて生産効率や販売効率の悪い形態となり Q・C・Dのバランスを崩す結果となってしまう。
一般的には、競争環境などの外部環境や自社の内部環境とのバランスの中で、マーケティ ング活動が最も効果的に作用するセグメントに集中してマーケティング活動を展開する「集 中化マーケティング」の形態がとられる。
前述のP・コトラーによると、標的市場となりうる効果的な市場細分化を行うためには次 のような条件を備えていることが望ましいとしている。
① 測定可能性
消費者情報がリアルタイムに入手できること② 接近可能性
選別されたセグメントに対して、マーケティング・フォースを集中できること③ 実効性
標的となる市場において、セグメントがマーケティング努力を集中するに見合う価値を持っていること集中化マーケティングで企業が目指すものは、その標的市場におけるシェアがナンバー・ワンであるか、もしくはオンリー・ワンであることだ。