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製品戦略
(1)顧客満足と製品計画
(2)ポジショニング・マップ
(3)製品ミックス
(4)プロダクト・ライフサイクル
(5)プロダクト・ポートフォリア・マネジメント



製品戦略


  市場のセグメンテーションと標的市場を絞り込んだならば、次にマーケティングの4Pそれぞれ の個別戦略を作り上げて行く。
 これからのマーケティング活動の基本となるのは、顧客ひとりひとりのニーズやウォンツの 情報を的確に捉えて製品化し、提供するマーケット・インの発想であることは繰り返し述べて きた。
 しかし、顧客が購買を決定するとき、単に製品アイテムそのものの特性だけを比較対照とし ているのではなく、購入し、消費・使用し、廃棄するまでのプロセス全体を通したベネフィッ ト、そして製品が置かれた空間や使っているシーンの中にかもし出すイメージまでも要求して いることを忘れてはならない。

(1)顧客満足と製品計画


 顧客が求める機能特性に加え、購入前の情報提供や購入後のアフター・ケアなどのサービ ス、代金の支払方法、廃棄時の回収方法やリサイクル・システムなどの便益性を明確化にす る必要がある。また、販売チャネルやブランドも顧客満足度を高める重要な要素である。  開発部門や生産部門の意思が優先されるプロダクト・アウトではなく、上記のような顧客 とのリレーションシップを築いた上で新製品開発が行われ市場投入されなければならない。 製品計画の段階についてP・コトラーは次のようなプロセスで整理している。

製品計画のプロセス

① アイデアの創出

 マーケット・インの発想で見ると、消費者の意識調査やクレーム情報、日常の販売時 点情報、営業マンからの顧客情報やサービスマンからのメンテナンス情報などが基本と なる。また、新しい技術や機能で潜在需要の掘り起こしを考える場合などは、新素材や 新技術などの科学情報に敏感でなければならない。

② スクリーニング

  数々のアイデアの中から、経営理念や目的、経営戦略、内外の環境などというふるい にかけて選別を行う。

③ コンセプトの明確化

 選別されたアイデアを製品化する際の訴求ポイントとなるコンセプトをいくつか作り 上げ、場合によっては消費者テストを繰り返して反応を調べ、絞込みを行う。

④ マーケティング・ミックスの策定

 標的とする市場を定め、マーケティングの4Pそれぞれについて個別戦略を策定し、 最も相乗効果が高まるマーケティング・ミックス戦略について具体的な目標値を掲げて 決定する。

⑤ 経済性分析

 コストと売上高をシミュレーションし、見込まれる利益額が経営理念や目標に対して 見合うものかどうかを検討する。

⑥ 試作品・テスト

 製品コンセプトや経済性を確保しながら要求される特性を具体化するため、研究・開 発部門においていくつかの試作品を制作する。さらに、この試作品についてもテストと スクリーニングを繰り返し、最良のものを市場投入する製品として選定する。

⑦ 市場テスト

 マーケティング・ミックス戦略に基づき、経済性のシミュレーションをもとにした仮 説を立て、限られた範囲のテスト・マーケットで販売し、消費者や流通業者、販売業者 などの反応を調査する。仮説や予測どおりの反応が得られた場合はそのまま標的市場へ の本格的な投入に移行するが、場合によっては、コンセプト策定や試作品までキャリー バックすることもある。

⑧ 市場投入

 これまでのプロセスで得られた情報を分析し、投入のタイミングや標的とする市場に 対して広告・宣伝あるいはプロモーション、流通経路や在庫量など、具体的な段取りを 行って市場投入を図る。

(2)ポジショニング・マップ


 自社製品を他社製品と差別化を図るとき、消費者がその製品を購入するかどうかの判断基 準とする代表的な項目を2つ取り出し、それぞれをX軸とY軸に置き、その対比の中におけ る自社製品と他社製品の位置付けをマッピングする。
 ポジショニング・マップの目指すところは、同じような製品がたくさん発売されている状 況の中では、当社製品の購入を決意させ、他社との戦いに勝つためのインパクトの強い差別 化を図ることであり、もっと高度な戦略としては自社製品しかない状況(オンリー・ワン) を作り出し戦わずして勝つことである。

ポジショニングの概念図







(3)製品ミックス


 市場へ投入する製品が単一ではなく、いくつかのバリエーションを持たせる場合、その種 類と種類ごとのアイテムの構成をどのようにするかを決定しなければならない。種類を増や し、種類ごとアイテムもいろいろと取り揃えられれば顧客ニーズに対しきめ細かい対応が可 能となり、顧客満足度を高めることができるが、生産ラインや在庫量の増加など生産・流通 効率との兼ね合いを考えないとどんどんコストが押し上げられてしまう。したがって、自社 にとっての最適解を求める必要がある。

製品ミックスのイメージ図

(4)プロダクト・ライフサイクル


 市場に投入される製品は人間の誕生から寿命を迎える一生にたとえることができる。製品 の一般的なライフサイクルは、市場に初めて現れたあとどんどん成長し続ける時期を迎え、 成長は止まるものの一定の収益を稼ぐ期間を経過し、流行や新技術などの出現により次第に 必要とされなくなり生産が終了するという過程を踏む。
 これを次のような4つの段階で表すことができる。

プロダクト・ライフサイクルのイメージ図

① 導入期

  市場に製品が投入される段階で、製品の知名度も低く売れ行きもなかなか伸びない時  期を指す。製品化するまでに研究・開発費などがかかっているほか、生産量が少ないの  で製造コストも高く、販促費や宣伝広告費などの費用も多くかかるので利益は発生しな  い段階である。

② 成長期

  知名度や評価が高まるにつれ、需要が急激に伸びる段階。競合企業が市場参入してく  るので販促費や宣伝広告費への支出は依然として多いが、製造初期不良も低減し、生産  効率も高いレベルで安定するので、研究・開発費として投資した額を回収し、一挙に利  益を稼ぎ出す時期である。

③ 成熟期

  成長は止まるものの、市場での知名度やポジショニングが定着して安定した販売量を  キープできる段階をいう。他社の参入がない場合や追随を許さない場合には高い利益を  確保し続けるが、最近のように流行の激しい移り変わりや他社の積極的な参入などによ  りシェア争いが激しくなる時期でもある。その分マイナーチェンジや値引き販売などで  対抗せざるを得ず、利益率が次第に低下する。

④ 衰退期

  次期製品の出現や他社製品の追随により当該製品の需要が加速度的に低下する段階で  ある。この段階に入り込むと販促費を投入しても売上の回復はなかなかみられない。不  動在庫・死蔵在庫となりコストがかさみ生産中止のタイミングを間違うと赤字にさえな  ってしまう時期でもある。企業として収益を伸ばし続けるためには、前の製品が廃棄に  追い込まれる前に次の製品を投入して、収益の凹みを作らないよう新製品投入のタイミ  ングを図らなければならない。

(5)プロダクト・ポートフォリア・マネジメント


 プロダクト・ライフサイクルとの関連で、市場にある製品一つひとつが利益を稼ぎ出して  いる製品なのか、死に筋の製品なのかを正しく把握していなければならない。
  アメリカのボストン・コンサルティング・グループ(B・C・G)は、企業が永続的な成  長を続けるため、市場に置かれている製品の特徴づけとその組み合わせの戦略および死に筋  製品の見極めと撤退戦略を、市場成長率と市場占有率という2つの軸で描かれるマトリック  スにして次の4つのステージに分類して表している。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

① 問題児(Question marks)

  当該製品の市場成長率は高いが自社製品については市場占有率が低い(伸びない)の  で利益は少ない製品である。シェアを拡大するためには多額の販促費を要するが、この  まま高成長し続けしかもシェア・アップに結びついて花形製品に育つのか、無駄な投資  に終わるのか決断が迫られる製品でもある。

② 花形製品(Stars)

  市場成長率が高くしかも自社のシェアも高い自社にとって主力となる製品。   高成長率とシェア確保・維持のために多額の投資も必要となるが大きな利益を確保で  きる製品のことである。将来的には安定した利益を確保できる「金のなる木」へと育て  上げなければならない。

③ 金のなる木(Cash cows)

  市場成長率は止まったものの相対的シェアを高く確保している製品で、いわゆる定番  といわれる主力製品である。設備投資や販促費を多くかける必要がなく、安定した多額  の利益を確保できる。ここで得られた利益は「問題児」を「花形製品」へ育てるための  資金あるいは新製品開発のための資金として利用される。

④負け犬(Dogs)

  成長率、シェアともに低く利益を生み出せない製品である。ここヘポジショニングさ  れた製品は撤退のタイミングを見定めなければならない。






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